豊橋鉄道100年史 1924-2024
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70 ●田原市「ぐるりんバス」の運行受託弁天橋を走る吉川線の小型バス田原町巡回バスを試験運行当社グループにとって、とりわけ大打撃となったのが、新規参入規制の緩和である。これによって乗合と貸切、バスとタクシーといった従来の境界がなくなったため、タクシー会社のコミュニティバス運行受託が続出した。撤退条件の緩和も、地方自治体に「生活路線の維持に主体的な役割を果たす」という新たな課題を投げかけた。また、地方自治体が路線バスに関与する大前提が、「税金を投入する価値ある路線をつくる」ことに大転換した。このような背景のもと、「乗っていただくバス」になるには、改めてバス事業がサービス業そのものであることを理解する必要があった。すなわち、商品開発・企画などを通じて路線バスを商品として売り込んでいくことや、自由な発想で意欲的な試みを提案していくことが必要となったのである。また、「車からどう乗り換えていただくかを提案する」「自分たちの町に来ていただきたいから運行する」「バスを使ったライフスタイルを提案する」といった高い志をもって、自治体に働きかけることが必要となった。さらに国民共通の移動手段であり、環境などの社会問題にも貢献するといった乗合バスの社会的意義を、一般市民にも理解・認識してもらうような啓発・広報活動も必要となった。平成13年7月1日、田原町(田原市)から委託を受け、田原町巡回バスを3カ月試験運行した。高齢者などの交通弱者支援、公共施設の利用促進、商店街活性化などを目的に、渥美病院を拠点とする南北線、東西線、市街地循環の中央線の3路線の運行であった。試験運行後、田原町は平成14年7月から「ぐるりんバス」導入を決定したが、競争入札で新規参入事業者に落札されてしまった。当時、危惧していた乗合バス規制緩和の弊害が現実となったのである。そこで早急にローコスト体制を構築し、市町村との連携緊密化を進め、平成

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